肝臓小話
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
健康診断で、指摘される肝障害の中で、最も多いのが、脂肪肝です。脂肪肝は、過剰な中性脂肪が肝臓に蓄積し、内臓脂肪が過剰になった病態です。
脂肪肝の原因は、大きく分けて二つあります。一つは、アルコールの飲みすぎと、もう一つは、炭水化物・糖質の過剰摂取によるものです。現代は、飽食の時代と言われていますので、ほとんどが食事の栄養過多、肥満が脂肪肝の原因となっています。中年の半数は、脂肪肝を患っているとも言われていますが、最近は、若い人にも脂肪肝が増えてきています。脂肪肝の症状は、軽い倦怠感、上腹部の不快感など、はっきりとした症状は認めません。ほとんどが無症状です。過栄養が原因の場合は、体重の変動、体脂肪率と肝臓内の脂肪沈着の程度は、相関関係を示します。体重が増えてきて、何となく体がだるいと感じる方は、脂肪肝の可能性が高いと思われます。
肝機能検査値には、二つの種類があります。肝臓の細胞障害を表すAST、ALTと胆汁の流れの障害を表すγ-GTPです。一般に脂肪肝では、γ-GTPが高くなることが多いのですが、脂肪肝の中には、肝臓の細胞障害が強く現れるタイプがあります。即ち、γ-GTPよりもAST、ALTの異常値が強くあらわれるケースです。このタイプの脂肪肝は、肝臓の炎症が強くあらわれた脂肪肝で、アルコールが原因でない場合非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steato hepatitis)と言われます。
さて、この脂肪肝の治療はと言うと、特効薬は存在しません。脂肪肝の治療は、基本的には原因の除去です。すなわち、アルコールを控え、食事の摂取カロリーを少なくすることです。γ-GTPが高く、肥満を伴う脂肪肝は、炭水化物(糖質)の摂取を控えた食事療法で改善をみることが多いです。白い糖質=白米、うどん、スパゲティ、パンなどの精製された糖質は脂肪肝の脂肪の元になりますので、特に控えられて下さい。肉、魚、野菜などは制限がありませんので、タンパク質は十分に取られて下さい。
AST、ALTが高い脂肪肝、即ち非アルコール性脂肪肝炎は、食事療法に加えて、肝臓を守る内服薬が必要となります。治療薬としては、抗酸化ストレス作用を有するウルソデオキシロール酸、グリチロリチン製剤、リノール酸類のEPL、ビタミンE剤を使います。中性脂肪が高い場合はフィブラート系高脂血症薬なども併用します。これらの治療薬によって、肝臓の炎症を抑え、肝細胞を守りながら、肝機能の改善をはかっていきます。